Translate

ラベル 競争戦略 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 競争戦略 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年2月7日日曜日

「産業」の競争の激しさは参入障壁の低さとか参入企業数とかとはあまり関係ないと思う

 「産業」とは、「同じ消費者需要を満たす企業の集合体」のことだそうです。この「同じ消費者需要」というのが、「同じ商品」を指さないので「○○産業」という言葉でかなり狭い範囲から広い範囲までを指すことがあるのでしょう。

 参入しやすい産業には、多数の企業が参入します。小売りや飲食業などは日本中に何十万という企業がありますね。一方で自動車メーカーや空調機器メーカー、航空会社は10~20社程度だったり、航空機メーカーはたった1~2社、電機メーカーは数十社程度です。参入障壁の高さが参入企業数に大きく影響しています。

 経営論的には参入企業数が多いほど競争が激しく、少なければ競争がそれほど激しくないということになるようですが、それは実態とはかけ離れている気がします。果たして航空業界より飲食業のほうが競争が激しいでしょうか?

 これは、「産業」という言葉がどうしても実質的な市場の大きさと関係なく業種にフォーカスしていることによる気がします。例えばコンビニエンスストアであれば商圏である半径1~3km程度の範囲内でしか競争は発生しないわけで、「産業」の大きさや参入企業数とは若干かけ離れていることになります。半径1km以内でセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、サンクス、デイリーヤマザキ、スリーエフ、ジャストスポット、ポプラなど多数のコンビニエンスストアが確かに競争しているわけですが、ANAとJAL、スカイマークという少数企業が羽田~新千歳間で行っている熾烈な競争とは比べ物にならないはずです。

 オリオンビール創業者である具志堅宗精氏は、ビール工場を沖縄に建設するときに既存の日本のビール会社からかなりの抵抗を受けて苦労しています。機械を高額でしか売らないようにされたり、沖縄の水では良質なビールは作れないなどといった根拠の無い情報を投資家に流されたりといった具合です。

 要は、基本的に企業は競争の激しい状況に身を置きたくはないわけですから、特に寡占状態であったり少数しかいない産業であれば、既存の企業は新規参入を阻んで競争が激しくない状態を保とうとするということではないでしょうか?ANAやJALはスカイマークやエア・ドゥの参入に抵抗しましたし、最近でもデルタ航空がスカイマークの経営に参画しないようにあからさまに動いていました。(個人的にはスカイマイルがメインなのでクソ悔しいのは置いておくとして)折角の国内スカイチームメンバー誕生のチャンスがなくなって非常に残念だと思います。デルタ航空参画であれば、もっと国内の競争が激しくなったのになあ、と思います。参入企業数が少ない業界では、こういうことが起こるということではないでしょうか。

 「参入障壁」を特別視せずに、参入可能な能力を一つの経営資源として捉えればいいだけかと思います。特に情報資源が主になるわけですから、参入障壁に関わる部分は競争優位を保つ部分として重要な場合が多い、と考えればいいのではないでしょうか。

マーケティングは「戦略」である

 マーケティングという言葉がかなり広義なので、いろいろな捉え方が出来てしまうのがかえって厄介なのかなあ、と思います。

 マーケティングは本質的に戦略的なものでないといけないですが、経営戦略の領域と重なるために、マーケティングという言葉がセールス寄りに、つまり戦術論的に解釈されてしまいがちなのではないかと思っています。

 マーケティングの戦略の要素をおさらいしていきます。

 「戦略」="Strategy"は、自社と競合他社との競争に、どうやって勝つのかということです。この際、この「競争」とは、顧客の奪い合いの競争であると仮定して考えることになります。

 その中で、「3C分析」と「SWOT分析」を行うことが必要ですが、世の中の企業の多くは、これを行っていません。つまり、「3C」= Customer, Competitor, and Company がどのような状況なのかを明確に把握せず、事業の「SWOT」= Strengths, Weaknesses, Opportunities, and Threats が何なのかを明確に認識していない状態で事業をしているということになります。どう考えても恐ろしいですよね。これは、多くの「うまく行っているように見える」事業が5~10年程度で潰れてしまう大きな原因の一つでしょう。

 実は経営者がこの辺のことがわかっていなくても、KSF (Key Success Factor)、つまり重要成功要因を一時的に満たしてしまうので、持続不可能な事業が生まれては消えてしまうということになります。そもそも市場に参入するということは、何かしら勝算があって参入するわけです。例えば消費者にとって圧倒的にメリットがある画期的な新商品であれば、経営効率が悪かろうがマーケティングのスキルが弱かろうが勝ってしまうわけです。

 しかし、時代とともに画期的な新商品であっても陳腐化していき、戦略がしっかりしたところが勝つようになってくるわけです。そうなったときにしっかりと戦略を見直して改革し、立て直すことができる企業は良いのですが、多くの企業が成功体験に囚われることによって改革ができずに没落していくといったことになるわけですね。

 事業拡大の時にもこの罠に嵌ります。画期的で、エンスージアスト層やアーリーアダプター層に人気の商品が、普及期に入るといつの間にか他社に完全に市場を取られているといったことが起きます。

 琉球大学の「戦略的マーケティング」の講義では、競争優位を獲得した企業として「ジャパネットたかた」が挙げられました。ジャパネットたかたは、自分が思うに家電量販店や通販サイトと全く違うのは、1つの商品を集中的に取り上げてセールスするクロージング力と、売れない格安商品を抱き合わせ販売で積極的に処分するという商品設計力の2点ではないかと考えています。知名度やエンターテイメント性、仕入れ競争力といったものはそれらを活かす上で戦略的に生み出されたものであって、特徴的という感じはあまりしない。

 なぜジャパネットたかたが持続可能っぽいかと言うと、一時的に優位に立った時点でテレビ放送枠の確保、セールスマンの育成や自社スタジオの設置など、他社に追随されて負けないための方策を打っている姿勢が見えるからでしょう。もし、たまたまスポットCMでうまく行ったことに胡座をかいて同じことを繰り返していたら、今のジャパネットたかたの地位はなく、とっくに模倣した他社に負けていたはずです。

 セールスがうまく行ったことを、マーケティングがうまく行ったと勘違いしてはいけない。マーケティングを戦略的にきちんと行わなければ、持続可能な競争優位はあり得ないということですね。