欧米において消費税の税率が高いのは政府側の欲求として財政を安定させたいために、コンスタントに税収がとれる消費税に傾倒しているに過ぎず、それに対する大衆の抵抗を政治的に抑えるために軽減税率を導入していると言えると思う。
この方法をとる場合は弊害があって、本来は低所得者などの負担を和らげるためという名目での軽減税率だが、品目で区別せざるを得ないために、付加価値の高い高級食料品なども課税を免れることにもなる。
また、新聞や書籍は対象だがDVDやPCソフトウェアは対象でなかったりというところで不合理性があるため、どの品目を軽減税率の対象にするかで綱引きが起きることになる。
例えば新聞を対象とするならば日本で言えば聖教新聞や赤旗などの組織の統制や集金のための媒体も軽減税率を適用するのが果たして適切なのかといった事も考えなくてはならない。食品ならば、食玩と呼ばれる食品として売られているが付属物の付加価値の方が高いとされているものをどう扱うかなど、細かい規定と運用が必要となってくる。
また多くの場合、衣料品であったり地方における乗用車やガソリンなど実質的に生活必需品であるものへは軽減税率は導入出来ていない。あまり品目を広げすぎれば税収は上がらなくなり、対象外の品目への負担感が大きくなってくるだろう。例えば食品は30兆円、水道・電気で20兆円もの消費があり、さらに新聞・書籍や医薬品、郵便、医療サービスなども除外し、さらにそれ以上に多岐に広げていくとすればかなり大幅な税収のダウンに繋がることになる。
このような制度を歪みなく運用するとなれば行政コスト及び民間の事業者にかかるコストは尋常ではない。軽減税率の方法は非常に弊害の大きい制度と言えると思う。
自分の考えとしては、消費税はこれまで通り一律として、所得の課税最低限度額の引き下げ(基礎控除、扶養控除などの拡大)と負の所得税による実質還付でカバーすることを提案したい。
例えば標準生活費は現在、1人世帯であれば自治体によっても違うが全国平均では毎月12万円~13万円程度。もともと消費税が非課税となっている住居費を除けば年間110万から120万円ほどが標準の消費額になると思われる。消費税率が10%とすれば、この金額の10%を消費時に支払っているのだから、それを還付すればいいわけだ。
これをいちいち全員に還付していると大変なことになるので、その分基礎控除を引き上げて、また負の所得税を導入することによって対応するというわけだ。
このようにすれば本当に必要な分の負担を軽減できるし、軽減税率の導入に比べてはるかに公正で、行政コストも低い仕組みとなるだろう。
参照記事
軽減税率、欧州は大半が採用 食料品、医薬品、新聞、書籍など対象
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/policy/621661/
消費税の軽減税率、与党協議本格化 対象範囲の取りまとめ急務
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/policy/621648/