沖縄の那覇市周辺は全国の政令指定都市と同様の密集状態にある大都市であることは意外とあまり知られていない。米軍基地のような人口空白地を含めても人口密度が高い状態であるから、都市交通としての鉄道の導入は実現性が高い状態にあるはずだ。仙台市や札幌市にすら地下鉄が発展していっていることを考えれば、これは当然の発想だと言えると思う。
次の琉球新報の記事によると、沖縄県の調査では那覇空港から沖縄市コザまでの区間は25キロで4000億円の事業費がかかるが費用対効果が高いとされている。
沖縄縦貫鉄道の実現可能性の調査に関する報道 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-164270-storytopic-3.html
しかし人口密集地域を抜けたうるま市以北や豊見城市以南では急激に採算性が悪くなり、事業化の目処は立たない。こうした調査結果によって、沖縄縦貫鉄道構想は足踏みをしている。
一方で那覇市周辺の人口は年々増加し続け、道路の渋滞が年々深刻化しており、対応策としてバイパスの整備などがされているが、いずれ抜本的な対策が必要とされ、早くしないと渋滞問題が沖縄経済に深刻なダメージを与えることになる。
その点から考えて、とりあえず那覇市から沖縄市の人口密集地域に関してはすぐにでも鉄道整備にとりかかるべきであると考える。このときネックになっているのが沖縄縦貫鉄道の試算では那覇空港からコザまで4000億円とされる事業費のファイナンスの問題のようだ。
これに関して、より費用対効果の高いアイディアを持ってすればクリア出来るのではないかということで、叩き台として以下の2点を構想する。
1.沖縄自動車道の上にHSSTの軌道を建設し、ゆいレール浦西駅と接続する
全て沖縄自動車道の上に建造し、上を通ることで用地の問題を最低限に抑える。HSSTはレールが簡便で小さく、カーブにも傾斜にも強く、加速も良く最高速度も出せるため、最適かと思われる。こうした建設方法がとれる鉄道はHSST以外にはあまり無いのではないかと思われる。
ゆいレールがすでに那覇空港から首里まで伸びており、さらに浦添市まで延伸する予定があるので、その区間についてはゆいレールに頼ることで総延長を抑える。中長距離の輸送に徹するのはモノレールとの役割分担としては丁度良いのではないか。
とりあえず2019年開通予定の浦西駅から沖縄市コザ運動公園周辺まで約13kmの区間を開通させ、その後需要状況を見て南は豊見城廻りの赤嶺/那覇空港周辺まで延伸、北はまず石川近辺まで延伸を検討していく。
事業費としては根拠はないが浦西~コザまで13kmで1600億円くらいのイメージになるのでは。
名護市など北部については30~50年後には採算性が見えてくるかも知れない、というところになるだろうし、特に急を要するようなことはないと思われる。何らかの大規模プロジェクトと連動して通すくらいだろうか。
2.那覇市旭橋あたりから北谷町浜川あたりまで国道58号線にLRTまたは上にHSSTを通す
一般社団法人トラムで未来をつくる会というところが、国道58号線にLRTを導入することを提唱している。
http://okinawa-lrt.org/
あと、慶応大学の学生の研究だと思うが、以下のドキュメントに那覇から北谷へのLRTの導入による効果の検証がある。
www.f.waseda.jp/akao/InterCollegeSeminar05/KU-2.doc
この国道58号線の区間には慢性的に渋滞する箇所があるので渋滞解消効果が非常に期待できるということだ。
LRTは費用が抑えられるため良いのだが、勾配にもカーブにもさほど強くない点や道路が狭くなってしまう点で実際にはこの計画には少々無理があるようではあり、交差点など共用するため運行本数や速度も限られてしまい、効果も限定的であるように思える。
こちらも中央分離帯上にHSSTを建設する方が将来のさらに交通需要が増した状態への対応や、南北への延伸、相互乗り入れなども考えられて良いのではないかと思う。旭橋~北谷町まで約17kmの区間を想定する。2000億円程度の事業費になるイメージで。
鉄道構想では高架、盛土、地下など複雑に絡み合い、用地買収などの困難な部分があるが、道路の敷地上を通すHSSTとLRTはそういった要素を排除して費用を抑えたり早期着工が可能なのではないかと考える。こういった問題の起きにくい構想を基本にして、局地的に解消すべき問題を潰して、改善していけば良いことだと思う。