大学の会計系の課題で出たやつの一つなので考えてみます。
正直言って、会計では先入先出法(FIFO)とか後入先出法(LIFO)ってオペレーションの都合上でやるもんであって、なるべくやらないほうがいいもんだとしか思ってなかったので真面目に考えたことがなかったんですね。
当然のごとくどんな状況でも移動平均法でやるべきだと思っていたんですが、これは自分が元個人投機家とかヘッジファンドのコントローラーとして仕事をやってたことも多分に影響しているんでしょう。証券税制とかファンドの会計では必ず移動平均でやるので。(ファンドではフロント側では中長期投資分とデイトレードなどのスイングトレードを分けて計算したりはしますが、バック側では同一銘柄であれば必ず移動平均です)
大学の講義で、原油とか市場価格が大きく変動するものを扱う商社とかが後入先出法を使うという話をしていたのを聞いて、(あれ?意外と難しい問題なのか?)と今更になって思った自分がいます。
まず、先入先出法の長所と短所
Wikipediaにはこう書いてあります。
長所
1.原価配分の仮定と物の流れが一致すること
2.その結果、物価変動時(価格変動時)にも、期末棚卸資産の貸借対照表価額が時価に近似すること

短所
1.物価変動時(価格変動時)には、期末棚卸資産の名目資本を維持するだけで、期首棚卸資産の保有損益(保有利得)が損益計算(分配可能利益)に混入してしまうこと
2.その結果、同一物価水準による費用収益の対応ができなくなること

うーん?ソースが無いのでどこかの受け売りなのか単なる誰かの考えなのかわからないけども、合ってるのかこれ?
原価配分の仮定と物の流れって先入先出法にしたからといって一致しないよね?一致させたかったら個別法にするしかない。現場でFIFOをやっている場合において、簡易的に個別法に近い結果をとることができるという程度に考えておいたほうがいいような気がする。
期末の評価額が時価に近似するとしているけれども、要は、マーケットで合理的な価格形成がされている商品で、早いサイクルで商品が回転することを前提とした場合においてのみ、いちいち原価と時価を比較して含み損益を考えなくてもある程度成立する、ということなんじゃないのかなと思います。
なんだか消化不良なので、手元の日商簿記1級のテキストを見てみる。うん、長所短所については何も書かれていない。まあ試験には出ないだろうしなあ。そもそも2級の範囲なのかも。
しかし、事務手続上の煩雑さを回避するために簡便な方法をとることがある的なことが書いてあるので、要は、移動平均法を使って時価で洗い替えをして含み損益を出すよりも、先入先出法を使えば、いちいち時価で洗い替えはしなくてもある程度正しいのでラク、ということなんでしょうね。
しかし、費用収益対応の原則からすると、仕入れた時の物価と販売した時の物価が異なっている場合に、その物価の差があたかも販売活動による損益であるかのようになって混入してしまうと。要はハイパーインフレのときのジンバブエで100ドルで仕入れたものが1000ドルで売れたからと言って、粗利率90%と言っていいのかって話ですな。結局は洗い替えしないといけなくなる。後入先出法よりも比較的それが起こりやすいということかと。
とはいえ、本当の先入先出法のメリットは、結局のところ、常識的な商品の流れに感覚的に沿っているのでイメージしやすい、ということが最大のものなんじゃないかと思います。
次に後入先出法の長所と短所。Wikipediaには以下のように書いてあります。
長所
後入先出法の長所として、以下の事項が挙げられる。
物価変動時(価格変動時)でも、期首棚卸資産に食い込んだ払出が行われない限り、期末棚卸資産の実体資本維持が可能であり、期首棚卸資産の保有損益(保有利得)が損益計算(分配可能利益)から排除される。
その結果、比較的同一物価水準による費用収益の対応が可能となる。

短所
後入先出法の短所は次のとおり。
原価配分の仮定と物の流れが一致しない。
その結果、物価変動時(価格変動時)には、期末棚卸資産の貸借対照表価額が時価とは乖離する。

先入先出法についてよく考えてみたあとだと、なんとなくわかる気がする。要は物価とか相場の変動の影響は仕入れ販売の活動による損益ではないから、とりあえず排除しておいて後でまとめて保有損益として処理したほうが実態に近いだろうということなんですね。そう考えれば、平均単価法など他の方法と比べても営業の実態を分析しやすい方法ではあるのかも。
しかし、期首棚卸資産に食い込まない限り、という点を考えるとこれはかなり厄介なんじゃないかと。
日商簿記1級のテキストには、後入先出法はさらに2つの方法に分けられると書かれていて、
・継続的後入先出法
・期間的後入先出法
があるとのこと。
後者の期間的後入先出法では、ある一定期間内だけ後入先出法を適用するということで、いつまでも古い単価が残るというデメリットは少ないし、期首棚卸資産に食い込むことはない。
前者の継続的後入先出法の場合が、期首棚卸資産に食い込むことがあるので大変そう。
でも結局、後入先出法がかつて広く採用されていたのは、インフレ時に利益を低く計上できるため節税できたという点が最大のメリットであって、会計上の合理性よりも圧倒的に、その税制の穴の部分が理由だったんじゃないですかね?
2009年に法人税法上は後入先出法は廃止されて、その理由は、
・棚卸資産の価額が再調達価額と大幅に乖離する
・期首棚卸資産に食い込んだときに保有損益と期間損益がごっちゃになって継続性がおかしくなる
・国際会計基準で全然認められない
ということで、これがまさにデメリットのまとめとして相応しいんじゃないかと思います。
で、じゃあ後入先出法をやめてどうするかといえば、インフレ時の税法上で先入先出法よりは有利な平均単価法をとるか、個別法で無理やりLIFOにするかってところなんですかね?
とりあえずこんな感じの内容でまとめてみようと思います。