今国会で審議されている有給休暇の消化義務化に対して、ダイヤモンドに掲載された山口博氏のコラム「実は日本人は休み過ぎ!?有給休暇消化の義務化は国力を損なう」が話題になり、これを見た一部の人に短絡的な「休み過ぎだから有給消化しにくくても文句言うな」みたいなアホな主張が見られます。
ここでの論点は2点あると思いますが、
・祝日が多すぎるからその分有給消化日数が少なくても働き過ぎにあたらない
・本来社員の裁量にあたる有給休暇を強制にすることで、社員から自由を奪う行為である
というのがこの筆者の主張になると思いますが、これも的外れだし、それを読み流しただけの、有給取らないのは当たり前主義者が2chなどで水を得た魚のように有給をとることを堕落かのように主張したりしているなど、なんともおかしなことになっています。
まず、平均の有給消化日数を持ちだして働き過ぎには当たらないとしている点ですが、今回の国会が問題視しているのは全くの消化ゼロなど、極端に有給消化が少ない労働者であって、平均だけを他国と比較する時点でズレているのです。みんなが平均日数を消化しているわけではなく、100%消化している人もいればゼロの人もいるわけです。この方法論には弊害もあるのはわかりますが、別のうまい方法が成立しないのであれば現状よりはベターだと私は思います。
有給が取りづらい、言い出せない、さらには有給休暇をとらないよう指示されている、有給休暇などないと騙されている(パート労働者に多い)などにより有給消化がほぼゼロになっている一部の労働者に対してどう対応するかということと、渡邉美樹とかの意識の低い経営者にどう啓発するかということに対しての方法論ですから、これに対して社員の裁量を奪うという指摘はいささかズレていると言わざるを得ません。もともと5日間は企業が取得日を実質的に指定することができるのが現行法ですが、このことを把握された上で仰っているのかは疑問です。
さらに重大な勘違いは、祝日が多ければ労働者の休みが多いと考えてしまっている点です。そもそも祝日が多いことと労働者の休みが多いことは一致していません。
祝日がカレンダー通りに休みという労働者は全体の4~6割程度であると思います。また、これは恐らく欧米諸国よりは低い数字かと思います。日本の場合は小売業やサービス業は祝日営業している割合が高いと思うので。なので実際には祝日で休んでいる平均日数と有給消化の平均日数を足したとしても日本がそこまで上位ではないでしょう。
また、日本では病欠に有給休暇を適用する場合が多いですが、諸外国では病欠はsick leaveやsick payとして別途設定されている場合が多いので、合わせて考えれば日本の休日は「明らかに少ない」です。
日本にはほとんどsick leaveがないことを知らない外国人からすると、日本は休みが多すぎると勘違いするのは理解できますが、外国の人事担当者にそう言われたからと鵜呑みにするのはバカみたいですね。
この辺でこの論の否定は済んだと思いますが、私の考えは、はっきり言って、目の前にどう考えても得しかしない権利が転がっているのにそれを拾わないという状況が数割の企業で発生しているという異常性が問題なのであって、企業と従業員の力関係をどうバランスさせるかという問題になります。
自分の場合は、この手の問題に対しては市場原理を働かせるというのが基本的なスタンスです。この場合は私も「取得義務化」というオペレーションに負担をかける縛りを設けるのはあまり良いことでは無いと思ってはいます。(それでも現状よりはベターなのですが)
この場合は、取得日数が所定の日数(例えば5日)を下回った場合はその分の有給休暇の買い取り、レートは休日出勤+超過勤務の場合と同様の1.60倍を適用を義務づけるという方法がより良いかと思います。(買い取りさせることが目的ではなく、取得させることが目的で、もともと5日間は企業が計画的に取得させることが可能なので企業に不利でもありません)
こういったことをすると例えば有給消化率10%未満と言われている過労死なども発生しているワタミフードサービスなどは有給未消化日数を負債として計上したり支払いをすると損益がけっこう悪化したりもすると思われます。間違いなく5日消化させるでしょうし、有給などない、とれないと騙されているパート労働者やアルバイトの認識も改まるでしょう。
あとは、労働基準法などがナメられすぎなので懲役刑の適用や罰金の高額化など刑事罰の強化が必要でしょうか。