もう当時の安部首相が所信表明演説で「イノベーション25」を謳ってから9年、実際に基本戦略が取りまとめられてからも8年が経つことになります。私はそんなことはつい先週まで知らずに過ごしてきたわけではありますが。

内閣府 イノベーション25
http://www.cao.go.jp/innovation/
その後政権交代があったりといろいろとバタバタしていたんでしょう。しかし、この急ごしらえの基本方針から派生して、今でも「イノベーション」に対するやたらめったらな公共投資、あるいは「公共投機」とでも呼べば良いのでしょうか、いろいろな政策が繰り出されている昨今なわけです。
きっとそれはそれで、そんなに悪い結果にはならないんじゃないかなあ、とは思うんですが、ちょっと視点がズレたまま進んでいるんだろうなあ、と思うわけです。
ドイツの2006年からのハイテク戦略と対比した下の記事が、正しいかどうかはともかくとして切れ味鋭く参考になります。2007年に書かれているので、その点は踏まえた上で読むべきではありますが。

「イノベーション25」:戦略性と危機感の欠如はどこからくるのか? 
~「ドイツ・ハイテク戦略」との対比 ~

http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=6471
要は、日本では、イノベーションが起きたらいろいろ便利になったりしていいよね、ということですが、
ドイツの場合は、価値を生み出すのはイノベーションしかないんだという本質を突いていると。
社会問題の解決のためのドラえもんのポケットみたいなものをイノベーションに求めようとしているのか、それとも、継続的なイノベーションというシステム自体を社会に組み込もうと考えるのか。「イノベーション25」の発想からは、新しい世界へはたどり着けないという感じがしていて、未だにこの亡霊に取り憑かれているのだとすればそれは勿体無くて残念なことだなあ、と思うのです。
基本的に政府のやるべきことは、イノベーションをしようとする企業や団体あるいは個人に対して、どうやって優遇するのかという条件の整備をどうするかが9割だと思うんですよね。資金面と税制面、あとは分野によってきめ細かくやるべきなのは研究設備や投資家との橋渡しや交流の場とかマネタイズの仕組みの部分でのフォローとかそんなのが求められてるんじゃないのかなと思うわけで、政府が描く未来像を実現するための手段を考えているのなら、そんなものは要らん、というのが正直なところでしょう。
ここから始まっている色々な政府の取り組みを利用するのは、予算の確保という面でよく理解しなければいけませんが、一方で政府自体がイノベーションに関する政策をどうすべきか、ということも考えながら活動しないといけないという現状でしょうね。