今年、2015年度から那覇市の沖縄産業支援センターで行われている琉球大学サテライトイブニングカレッジという公開講座があります。一般受講は有料だそうですが、琉球大学の学生は無料で参加でき、学部学科によっては卒業単位にも認定されるため、受講者のほとんどは琉球大学の学生で占められているのですが、さまざまな経歴の講師陣がいてとても貴重な機会になっています。
私も34歳のおっさんではありますが琉球大学の学生であり、特に経営系の学科で関連性が高いこともあって受講していますが、その中で「コーチング」に主眼を置いた授業があったわけです。
はっきり言って、10年以上の社会人生活を経た上でも「コーチング」をしっかり体系的に勉強する必要性というのはそんなに感じていませんでした。しかし、いざ講義を受けてケーススタディやワークショップやロールプレイングを経てみると、かなり「コーチング」に対するイメージが変わったのです。人材教育はもちろん、チームマネジメントや組織運営、プロジェクトマネジメントに役に立つやり方という認識くらいはありました。しかし、組織内外のリレーションシップ、要は人間関係全般についても大事な気付きがあって、「コーチング」を体系的に学べて良かったな、と思ったのです。
それはそれとして。
実際に20歳前後の学生たちや、社会人学生らと混じってコーチングを実践していった中で思ったことは、学生たちにしても多くの社会人にしても、何を目指してどう努力するかを常にきちんと設定できているという状況は意外と少ないんだなあ、ということです。もちろん私自身もそうなのですが、なかなか自分ではちゃんと意識できなかったことが、コーチングを受けると強く意識することができるんですね。
もちろん、コーチングをする側とされる側が課題解決のためになんとかしようという方向性が一致していたからスムーズに行ったということはあります。
しかしそれ以上に、コーチングを学んだ上でまた社会生活の中で気付かされることもあって、私がPMになっている仕事上のプロジェクトのことで役員の方に相談した時に、「それって菊池さんが本当にやりたいことなの?」という質問を受けた時に、ああ、相談した相手であるこの人はコーチングのスキルを体系的に学んだことはないかもしれないけれど、僕のことを考えてくれているからきちんとコーチング出来ているんだなあ、と思ったのです。
その質問「それって菊池さんが本当にやりたいことなの?」というのが、その時の私の悩みに対して実にツボを押さえたものだったので、流石だなあ、と思ったのです。
なんとなく多くの人は「出来ること」を増やそうとして能力や技術を上げようとすることが多いと思うのですが、やりたいこと、目標がはっきりしていれば能力や技術はそのために身につけることが出来ます。出来ることの範囲内でやることを考えていると世界は誇張抜きに100倍狭くなります。
自分が出来ることをベースにこれからの方向を考えていたので、「やりたいこと」ではないことをやろうとしていた。そのことを、きちんと指摘してもらえたわけです。
仕事をしていれば、あるいは学生であったとしても、「やりたいこと」より「やれること」に引っ張られてしまうことはよくあると思います。私の経験で言うとちょっとPCハードウェアに詳しいだけで、なんとなく担当でもないのに社内のITインフラ関係の仕事が膨らんでしまうとかですが、車に詳しい人がなんとなく車両管理の仕事に引っ張られたり、趣味で音楽をやっている人が音楽担当にさせられたりということもよくあるのではないでしょうか。
スキルが評価されながら流れに身を任せるのはとても楽ではあるのですが、やりたいことからズレでしまうと、最終的には生産性は上がらず、競争に負けるしかない。
会計や広報などのビジネスの一般的なスキルの高さで自分の価値を置いてしまうと、ある種「何でもできる人」になってしまうこともあって、「やりたいこと」からどんどんズレていくことになりかねない。今回の自分の場合で言えば、「経営学」「ITスキル」があることによって、ビジネスを成立させる力が自分にはあるため、さほどやりたくもないけれどもやろうとしていた、ということがあからさまになったわけです。
経歴、資格、技術よりも、圧倒的に「方向性」を自分の「心」と一致させることが大事であるということがきちんと意識に上ってきたことで、これからの人生にいい影響になったと思います。
自分に対していい影響があったと同時に、「コーチング」を行うことが他人に対して同様にいい気づきを与えることができることだとわかったので、今後は部下との面談にしても、いろいろな場面で相談を受けた場合にしても、本当にいい影響を与えることが出来るかなと思いました。