前々から沖縄県経済というのは非常に危うい状況の中にあるとは思っていたのですが、実際のところ何が危険なのかというはっきりした説明は出来ずにいました。今回は、沖縄県経済の全体のざっくりした数字のイメージを簡単に示すことで、その危うさが何なのかをきちんと把握したいと思います。

そもそも沖縄県は人口も増加していて日本で最も経済成長している地域ですので、多くの人は沖縄県経済に関しては楽観的に見ている状態であり、沖縄県経済が危ないと言っても沖縄県内では多くの経営者や役人らを含めてあまり聞いてくれる状況ではありません。そういった認識なので、将来に向けて危機感を持って対応しようという声はごく一部にしか届かない状況です。このマインドも沖縄の危うさの一つでしょうか。

とりあえず沖縄県経済の全体像はこれ

沖縄県の経済規模は約4兆円です。

下のグラフは、主に2014年度から2015年度の調査や公表された会計の数値をもとに私がおおまかに把握した沖縄県経済の域内・域外に対する支出・収入の状況です。数字は500億円単位で適当に丸めましたので、細かい部分で正確ではありませんが、おおよそこのようになっていると思います。

沖縄県の「貿易赤字」約9500億円

域外との貿易では国内・国外と合わせると約9500億円の「貿易赤字」ということになります。4兆円のうち約4分の1の貿易赤字ですから、凄まじい割合ではないでしょうか。4兆円のうち半分近い1兆9000億円を移入・輸入が占めているというのが移入・輸入に依存している沖縄の姿を示しています。

それを穴埋めしているのが、中央政府からの支出です。

国から沖縄へ1兆円を移転している

沖縄という地域は国からの補助に大きく依存していると言われていますが、沖縄県はそれを否定しており、決して過度に依存はしていないと言っています。

沖縄県の論拠は、他の道県と比較して依存度が高くないということですが、それは批判の矛先を逸らすことにはなるかも知れませんが、国に依存しているという問題点がなくなるわけではありません。

沖縄県から国に納めている国税と、国から沖縄県および沖縄の市町村へ配分されている地方交付税交付金、国庫支出金、そして米軍関係予算の合計を比較すると、約1兆円が国から沖縄へ移転されていることになります。
つまり、沖縄県内に必要なものを移入・輸入するためのお金を国に依存しているような構造です。

「国からの1兆円」が減るとどうなるか

これから沖縄県や政府の取り組みにより沖縄の米軍縮小が実現したり、米国トランプ大統領の政策次第でも米軍関係予算は大きく変わるでしょう。
また、地方交付税交付金や国庫支出金は、国債金利が上昇するなど国家財政が危うくなれば、容赦なく減らさざるを得なくなります。
もしこの国からのお金が減るとどうなるかと言えば、それは「沖縄からの資産の流出」に直結するということです。必要なエネルギーや食料、製品などを域外から購入するために、県内の資産を切り売りしながら生活することになります。
ただでさえ国内最低レベルの賃金、一人あたり生産である沖縄は、富の流出、ストックの減少でマレーシアなどの発展途上国並みの経済になる可能性があります。家族の何人かが東京や台湾に出稼ぎに行かなくては生活が立ち行かなくなり、人口は減少していくでしょう。

ミッションは生産性3割向上、移出・輸出1兆円増

沖縄はこれから、急速に生産性を向上させて域外からお金を稼げる構造にしなければいけないと思います。移出入のギャップを埋めて、国への依存体制をなくすようにしないと、急激に貧しくなってしまう可能性があります。つまり移出・輸出を1兆円増やすことを目標に掲げるべきです。
そのためには今のような観光客をどんどん増やすといったことだけでは難しく、沖縄で生産すれば他よりも効率が高いという状況を作らないといけません。
しかし、沖縄は今、特に道路など交通のインフラに余裕がありません。経済規模の拡大とともに那覇都市圏が拡大して来ましたが、中心部から離れると生産性の低下が顕著です。生産の拡大には生産性の向上が不可欠な段階に来ています。生産性のジャンプアップ、3割向上を目指していく必要があるでしょう。
そのためには鉄軌道や自動運転の導入、電子政府化などの行政の効率化、積極的な規制緩和、教育や研究開発への集中投資などあらゆる手段をとることが大事です。
だからこそ、沖縄県の政治家、役人をはじめとした沖縄県民が、沖縄県経済は危機的状況であるという認識を共有することが重要ではないかと思います。