読売新聞は、政府は2018年にもマイナンバーカードを保険証代わりに利用できるようにする方針を固めたと報じました。

病院でもマイナンバーカード、保険証代わりに 

政府は、2018年度にマイナンバーカードを健康保険証として 利用できるようにする方針を固めた。
患者の本人確認を迅速にし、医療事務の負担を軽減するとともに、 カードの普及を図る。厚生労働省が17年度当初予算案に、 システム構築の関連費用などとして243億円を計上した。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170102-OYT1T50086.html

これは2013年のIT総合戦略本部の工程表にも書かれており、2014年6月3日に開かれた第64回会合での安倍首相の発言にも沿った内容であり、既定路線ではあると思います。

他の証明書もどんどんマイナンバーカードに統合される?

工程表には「健康保険証」の他にも

  • 地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人等の職員証、民間企業としての社員証としての利用促進検討
  • キャッシュカードやデビットカード、クレジットカードとしての利用やATM等からのマイナポータルへのアクセスの実現に向けた民間事業者との検討
  • 行政が発行する各種カード(印鑑登録者識別カード、施設利用カード等)との一体化
  • 各種免許等における各種公的資格確認機能をマイナンバーカードに持たせることについて、その可否も含めて検討を進め、可能なものから順次実現

 などが書かれており、2021年までにはこれらのを実施するような書かれ方になっています。

つまり2021年までには健康保険証だけでなく、

・運転免許証
・住基カード、住民登録カード、印鑑証明カードなど
・危険物取扱者免状、無線技術士免状など資格証

などなど、いろいろな資格の免許証が可能な限り2021年までにマイナンバーカードへ一元化されていくというのが、現在の政府の方針ということになります。

「電子政府先進国」エストニアが全ての前例として存在する

政府のマイナンバー活用についての検討の経緯を見ていると、やはりエストニアの事例が頻繁に出てきます。人口約131万人で、しかも発展途上国であるエストニアが上がってくるのは、やはり電子政府の分野では間違いなく最先進国だからです。10年前の2007年には健康保険証としての利用が可能になっていますし、電子処方箋や日本の「おくすり手帳」に相当する機能も含まれています。運転免許証や、選挙への投票券としても利用されています。

マイナンバーカード活用に関することは、はっきり言ってエストニアのeIDカードと同じことをやればいいだけ、と言っても過言ではありません。セキュリティに関してもエストニアの方法が成功していますので、真似をすれば、あるいはエストニアの仕組みをそのまま導入すれば良いのです。エストニアは国に資源がなく、何もなかった状態から生き残るためにICTを発展させました。日本は今まさに直面する経済と財政の弱さという事態に立ち向かうためにICTが必要です。

日本のマイナンバーの制度設計上の失敗のひとつが、マイナンバーを隠さなければならない仕組みです。エストニアでは国民ID番号は隠すことは特に意識されておらず、その前提でセキュリティ対策がなされています。マイナンバーカードでの電子認証がなければマイナンバーに紐付いた情報を利用できないといった仕組みに切り替え、マイナンバーを隠すために企業や行政が多大なコストをかけている現状を改めなければ、逆に日本全体の生産性が下がる危険性すらあります。

日本のマイナンバーの仕組みは、もっとエストニアの前例に素直に従った方が良いと思います。

カードの普及率を上げるための思い切った決断が必要

マイナンバーカードの普及率は約8%で、今回の健康保険証についてもカードの普及率が低いままシステムが導入されれば医療機関や行政機関にとっては却ってコスト増の要因になる危険性があります。

エストニアやシンガポールではIDカードは15歳以上の国民全員に配布されており、全ての行政サービスは国民全員がカードを持っている前提で設計することができます。日本では義務化せずに申請を促して普及させていくといった流れですが、せっかくの行政コスト削減や民間企業の活用のチャンスを逃すばかりか、かえって負担をかける結果になるかも知れません。

エストニアやシンガポールと違って日本は桁違いに人口が多いので難しいという面もあるかと思いますが、思い切って義務化なり思い切ったインセンティブの提示を行って9割以上の普及を目指すことが求められるでしょう。

沖縄が電子政府化の先行地域として手を挙げよ

まずは人口約145万人の沖縄で、マイナンバーカードを義務化してみるのはどうでしょうか?これによって沖縄全体で生産性が上がり、マイナンバーカード普及によるメリットが国民全体に明確になるはずです。

沖縄の全ての医療機関と薬局の数は合わせて2,200程度です。この全てに公費でマイナンバーカードを活用した共通電子カルテ、電子処方箋、おくすり手帳を導入するシステムを導入してみるのはどうでしょうか。

運転免許証の統合もまずは沖縄で行えば良いと思います。沖縄県警の職員数は約2,500、車両数は約800です。自動車も警察も越境が少ないため、導入しやすいはずです。

これらは1,000億~2,000億円規模の予算でできることだと思いますので、昨年度のように一括交付金が有効に使い切れずに減らされるくらいなら、沖縄先行で高度な電子政府化に舵を切って日本の中で最も進んだ地域になれば良いと思います。