以下は2017年1月に私が大学のレポートとして提出した内容のリライトになります。
沖縄県の主要な農産物の一つであるさとうきびの栽培はその多くを交付金に頼っていますが、特に県内でその生産量の多くを占めるのが宮古島市です。宮古島市において、さとうきび農業が経済全体に占める割合と、その課題を考えます。
宮古島市のさとうきび生産の状況
宮古島のさとうきび生産量は345,072トン(平成27年度 沖縄県)、沖縄県全体では754,671トンで、沖縄県のさとうきびの約45.7%が宮古島市で生産されています。
宮古島市のさとうきび生産者数は5,069(平成27年産甘味資源作物交付金交付者数)で、人口54,519人(平成27年度 宮古島市統計)に対して少なくとも5千人以上、およそ10%の農業就業者がさとうきび栽培に携わっているものと考えられます。
沖縄県全体では人口143.4万人に対してさとうきび生産者数は13,898で、以下の表のように、宮古島市のさとうきび生産者数は人口比で沖縄県全体の約9.59倍となっています。収穫面積は宮古島市が5,203ha、沖縄県全体では13,212haとなっており、宮古島市は人口あたりのさとうきび収穫面積が沖縄県内の10.37倍と、県内でも宮古島市のさとうきび生産が盛んであることがわかります。
宮古島市と沖縄県のさとうきび生産量、生産者数と収穫面積
さとうきび 生産量 |
人口 | 生産者数 | 収穫面積 | 千人当たり 生産者数 |
千人当たり 収穫面積 |
|
宮古島市 | 345,072 t | 54,519人 | 5,069 | 5,203ha | 93.0 | 95.4ha |
沖縄県 | 754,671 t | 143.4万人 | 13,898 | 13,212ha | 9.7 | 9.2ha |
宮古島市のさとうきび販売実績は約71.2億円、うち甘味資源作物交付金は約53.7億円です。宮古島市のGDP(純生産額)1,016億円(平成25年度 沖縄県)であり、さとうきび農業への依存度は7.01%にもなります。
沖縄県全体では、販売実績約149.6億円、うち交付金が113.4億円。沖縄県内純生産額2.97兆円(平成25年度 沖縄県)で、さとうきび農業への依存度は0.50%です。
いずれも収入の4分の3超を交付金に頼っているのがさとうきび農業です。
宮古島市と沖縄県のさとうきび交付金とさとうきびの経済全体に占める割合
さとうきび 販売実績 |
甘味資源 作物交付金 |
交付金 依存割合 |
GDP (純生産額) |
さとうきび 依存度 |
|
宮古島市 | 71.2億円 | 53.7億円 | 75.4% | 1,016億円 | 7.01% |
沖縄県 | 149.6億円 | 113.4億円 | 75.8% | 2.97兆円 | 0.50% |
今後のさとうきび農業にと経済についての考察
TPPへの参加や財政悪化など、甘味資源作物交付金の見直しが行われる状況になれば、さとうきび農業にとって大きな打撃となる可能性があります。さらに、砂糖の輸入には1キログラム当たり103.1円の関税がかかっており、関税により内外価格差がほぼゼロとなるよう調整されています。よって事実上、国産砂糖の大幅値上げをした場合、砂糖消費の輸入への移行が起こる結果となるため、交付金の見直しがあった場合、さとうきび農家の大半は存続不可能となることが予想されます。
交付金の廃止を想定した場合、現在のさとうきび1トン当たり交付金込みで21,825円の収入がある状態から、甘味資源作物交付金を除いた5,095円の販売価格のみで農家の経営が成り立つよう改革を行う必要があります。また、その上関税の廃止を想定した場合、さらに数割の生産性向上が必要となります。
もし改革が行われず、さとうきび農家が壊滅的状況となった場合、沖縄県全体としては致命的ではありませんが、宮古島市の経済は最大7%の致命的打撃を受けることになります。
USDA(アメリカ合衆国農務省)による2013年のレポート(※1)によると、ブラジルでのさとうきび価格は1トン当たり68.54レアル、日本円で約2,300円となっています。ブラジルでは1975年から1990年まで、さとうきびからのバイオエタノール生産に対して補助金を支給して推進してきましたが、1990年に補助金を打ち切っています。その後ブラジルでは品種改良やコスト削減、経営効率化により補助金なしでさとうきび栽培が成り立つようになりました。
沖縄、特に宮古島市においてはブラジルに倣い生産性改革を行い、また砂糖だけでなくエタノール生産を基軸に据えることを検討すべきです。日本でも特にエネルギー自給率の低い沖縄ということも踏まえ、農業保護としての甘味資源作物交付金から、エネルギー政策の観点からの政府補助の導入へとシフトしていくことは大いに検討に値すると考えます。
※1 USDA Foreign Agricultural Service GAIN Report (2013/4/22)
http://www.thefarmsite.com/reports/contents/BrazilSugarMay2013.pdf
参考
平成27/28年期 さとうきび及び甘しゃ糖生産実績 – 沖縄県
http://www.pref.okinawa.jp/site/norin/togyo/kibi/mobile/h27-28seisanjisseki/documents/seisanjisseki.pdf